歴史を変えた?!影響力が大きかった映画3選

映画は、たびたび「逃避行」だと非難されることもあります。主に娯楽やエンターテイメントとして製作されますが、映画が持つ”世界を変える可能性“を否定するのは間違いでしょう。映画は、これまでに考えられていたよりも、はるかに大きな影響力を持っているのです。文化や政治、法律、そして最も重要なのは歴史にまで影響を与えるパワーを持っているのです。以下に挙げる3つの映画は、まさにそれを成し遂げてきた名作ばかりです。良きにつけ悪しきにつけ、各時代のゲームチェンジャーとして役割を果たしてきたのは事実です。では早速、詳細を見てみましょう。

 

  1. 『ブラックフィッシュ』

『ブラックフィッシュ』は2013年に公開された映画で、世界中を驚かせました。雄のシャチであるティリクムを描いたストーリーに、何も知らなかった何百万人もの観客が夢中になったのです。同作は、シーワールドで飼育されていたシャチが狭い部屋に閉じ込められ、虐待などの残忍な扱いを受けたために、トレーナーを3人殺害したという恐ろしい物語を記録した、ドキュメンタリー映画です。このかわいそうな海洋動物が密室でどのように扱われていたかという事実が明らかになると、世界中の人々の怒りに火をつける結果に…。TwitterやFacebookなど、SNS上に動画シェアやコメントが殺到し、この”娯楽的”なシーワールドのショーの悪質行為が批判の的になったのです。何百万人もの人々がこのシーワールドをボイコットした結果、シーワールドのイメージは崩れ、チケットの売り上げは激減し、株価は半値になりました。

  1. 『A Girl in the River: The Price of Forgiveness(原題)』

「名誉殺人」が国民の恥だと捉えられるのはよくある話です。名誉殺人によって年間5,000人もの女性が死亡しているにもかかわらず、多くの国では、このような無慈悲な方法で女性を殺害する行為は、いまだに合法だと許容されているのです。アカデミー賞受賞歴がある女性監督オベイド=チノイは、この悲しい現状を変えようと固く決意していました。彼女が製作した映画『A Girl in the River: The Price of Forgiveness(原題)』は、禁断の恋をしたために父親に殺されそうになった女性を描いた作品。最も衝撃的なポイントは、彼女の父親が自分の行為の重大さに気づかないという点。それどころか、自分の家族を不名誉から救うために、自分の娘を殺すことは正当なことだと考えていました。幸いなことにも、パキスタンの首相であるナワズ・シャリフ氏は、この父親の考えに同調しませんでした。同作を鑑賞した後、名誉殺人に関する法律を改正する決意を固めたと主張。パキスタンのフェミニズムにとって歴史的な大進歩でした。オベイド=チノイ監督は、この変革こそ”映画の力”を示していると、アカデミー賞受賞時のスピーチで述べています。

  1. 『Victim(原題)』

イギリスのタブロイド紙によって公に同性愛者が異常者扱いされていた時代では、映画におけるLGBTQ+キャラクターは伝説的な存在でした。そんな生きづらい世の中であった1961年に公開された映画『Victim』は、映画界に蔓延していた同性愛者ヘイトに対抗することを目的とした、当時では勇気のある作品でした。あらすじは、同性愛者の弁護士がゲイであることを理由に投獄され、自殺した元恋人を弁護することで、キャリアと豊かな生活を危険にさらすという話です。同作は、同性愛者の主人公に共感を呼ぶという史上初の映画であり、当時ではかなり画期的なストーリーでありました。イギリス社会に蔓延っていた極端な同性愛者ヘイトを改善しただけでなく、政治的にも大きな影響力を持ったそうです。なんと映画公開と同時に、同性愛を合法化するかどうかが立法府で議論されたのです。後に、同作が議会の進展に大きな影響を与えたことが判明し、最終的には1967年の性犯罪法の成立につながりました。

上記の事実からもわかるように、映画が与える影響は想像よりも大きく、映画には国や政治において最も重要で頑固な人をも納得させる力があるといえるでしょう。